ウォール街のランダムウォーカー 株式投資の不滅の真理

書籍

こんにちは!ぐんじです。

株式投資のバイブル本でもあるウォール街のランダムウォーカーの概要と感想について書いていきます。

初心者の方には少し難しいと感じる部分もあると思いますが、その際には第1部 株式と価値、第4部 ウォール街の歩き方の手引き の2部のみを読むだけでも株式投資に関する理解が深まります。

【本書 目次】

  1. 株式と価値 … 歴史からなぜバブルが起こるのか
  2. プロ投資家の成績表 … テクニカル分析とファンダメンタル分析は意味がない
  3. 新しい投資テクノロジー … 株式投資の学問的な理論
  4. ウォール街の歩き方の手引き … 実際に株式投資するときの注意点

筆者の考え

「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネージャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックスファンドを買ってじっと待っているほうが、遥かに良い結果を生む。」

この1文が筆者のコアな主張であり、個人投資家にとっては「長期保有のインデックス投資が最適な解である」ということです。株式投資の分析手法としてテクニカル分析とファンダメンタル分析がありますが、過去の実績からこの分析で市場平均を上回り続けることは困難であるため、インデックス投資が最適解になるということです。

また、分散することでリスクを軽減させることが大切であるとしており、株式投資では自国の株式のみならず、新興国含めた外国の株式にも投資することが有効です(所謂、全世界株式が最適解)。さらに投資アセットは株式のみにならず、債券、不動産、ゴールド等のコモディティ、骨董品等にも投資をすることでリスクを抑えらるというものです。

株式と価値

大事なのは、その産業や企業が利益を生み出し、それを維持していく能力なのだ。歴史に照らしてみれば、行き過ぎた株式ブームというものは、遅かれ早かれ重力の法則に屈してついえる。

第1部では株式市場の歴史を中心に書いてあり、オランダのチューリップバブルや日本の不動産バブル、アメリカのインターネットバブル、住宅バブル(リーマンショック)等が発生した原因の解説しています。

例えば、2000年代のインターネットバブルは、インターネットという新たな技術とインターネットを用いて人々が情報を入手し、モノやサービスを売買するという新しい事業機会の到来により発生したとされています。

期待感から事業内容がインターネットと全く異なる企業でも会社名にドットコムが入ってるだけで株価が暴騰していくという現象(企業名を変更しただけで株価が2倍になった企業もあり)やインターネット関連のIPOも活発になり、しまいには事業内容が不明なインターネット関連事業のIPOも行われていました(もちろん企業名はドットコムがついていた)。

さらにアナリストやメディアが煽ることで株価の上昇を後押ししていくことになりますが、化けの皮が剝がれ、企業実態は優れていないことから、株価は暴落(▲90%下落した企業も…)し、バブルがはじけました。

また、12版より仮想通貨についても追記されています。

プロ投資家の成績表

多くのチャーティストの信ずるところによれば、株価の動きのうち、合理的に説明がつく部分はせいぜい10%くらいで、残りの90%は心理的な要因によるものである。一方、ファンダメンタル・アナリストたちはその対極に位置する。彼らは株価の動きの90%は合理的なものであり、心理的な要因によるところはせいぜい10%にすぎないと主張する。

テクニカル分析を基に投資を行うチャーティストは株価や出来高の推移等の過去の記録を分析することで今後の相場動向を知る手がかりが得られると考えています。

この手法では①トレンドが形成された後に売買を行うこと、②同じ手法を用いる人が増えると利益が上げられないことからうまくいきません。

一方でファンダメンタルに基づく投資では過去の株価パターンには興味がなく、株式の適正価格はいくらかということに関心があります。

こちらの手法でも①情報や分析が正しいとは限らない、②たとえ情報が正しく、将来の成長率も適切に予想されるとしても、株価評価を誤る可能性がある、③情報、推定結果のいずれが正しくても株価が下がる可能性があることから、うまくいかない手法であります。

これら2つの分析を用いても市場に勝つことは難しいということが筆者の考えでもあります。

ランダム・ウォーク

本書ではテクニカル分析を否定することとして、コインを投げて表が出たら上昇、裏が出たら下降のルールで架空の株価チャートを作り、その架空チャートをチャーティスのもとに持っていったら「これはなんという銘柄だい。今すぐ買いだ!」といい、それは架空のチャートが強気のサイン(買い推奨)のパターンとなっていたためです。

このようなランダムなプロセスで得られた一連の数値のことをランダム・ウォークといい、ランダムなプロセスによって得られた得られたチャートが次にどのように動くかは過去の動きに基づく限り全く予想不可能です。

新しい投資テクノロジー

あくまで運用の中心は幅広く分散された、市場インデックス・ファンドであるべきだ。まずは伝統的な時価総額加重平均の市場インデックス・ファンドの保有から始めることをお勧めしたい。

この章では現代ポートフォリオ理論やベータ、CAPM等の基本的なファイナンス理論や知識に加えて、比較的新しい行動ファイナンスやスマートベータ、リスクパリティについても説明しています。

コアな投資戦略としては現代ポートフォリオ理論に基づきリスクを軽減しながらリターンを得るインデックス投資がよく、そこからさらにリターンを求めていく投資戦略としてスマートベータ戦略やリスクパリティ戦略が紹介されています。

ウォール街の歩き方の手引き

投資プロセスの中で、殆どの人は運用目標をしっかりと設定することの重要性を理解していない。その結果、大きな失敗を犯しがちである。運用を始める当たって、まず自分はどこまでリスクを取るべきなのか、はっきりと認識しなければならない。

第4部では株式投資をする際に致命的な失敗や余計な手数料の支払いを避けること、リスクを適切に取りリターンを得るためのルールや注意点、おすすめのETF等が紹介されています。

リスク

リスクを抑えるためには分散することが基本的な考えになっています。株式であれば新興国を含めた全世界の株式へ投資、さらに株式のみにならず債券や不動産等の株式と相関が低いアセットも保有することでさらなるリスク軽減を推奨しています。

安眠できる水準を決めることがすべての投資プロセスの出発になり、投資の世界では高いリターンを得るにはそれに見合った高いリスクを取ることで初めて得ることができるものです。即ち、高いリスク求めて安眠ができないほどのリスクを取ることはリスクを取りすぎているため改めるべきという考えです。

また、具体的な保有するアセットの割合やETFも提案されており、50代半ばの人の推奨ポートフォリオとして、現金5%、債券27.5%、不動産12.5%、株式55%としています。

若ければ債券を減らし、株式を増やすことになります。その際の注意点としては株式の中の保有銘柄割合は変えないということです。例えば、S&P500:TOPIXを4:1で持っていた場合はポートフォリオ内の株式の割合を増やす(例えば倍に)としても株式間の保有割合はS&P500:TOPIX=4:1(倍だと8:2)を維持し続けるという事です。

歩み方

  • 思考停止型の歩み方-インデックス・ファンドを買う
  • 手作り型の歩み方-有望銘柄を自分で探す
  • 人に任せるタイプの歩み方-専門家を雇うべし

本書では3つの歩み方が紹介されています。インデックス・ファンドを買う思考停止型の歩み方を1番推奨していますが、インデックス・ファンドでは退屈すぎることから資産の一部で個別株に投資することはいいのではないかというスタンスです。その際は以下ルールに基づいて行うことがよいでしょう。

  1. 少なくとも5年間は、1株当たり利益が平均を上回る成長を期待できる銘柄のみを購入すること
  2. 企業のファンダメンタル価値が正当化できる以上の値段を払って株式を買ってはならない
  3. 近い将来「砂上の楼閣」作りが始まる土台となるような、確固たる成長見通しのある銘柄を購入するとよい
  4. なるべく売買の頻度を減らすべし

最後に人に任せるタイプはお勧めできないとされています。過去、市場平均を上回り続けたファンドマネージャーがウォーレン・バフェットを除いて引退してしまったこと、最近になってさらに過去の運用成績が将来の投資パフォーマンスの参考にならなくなってきたためです。

感想

バブルを中心とした株式市場の歴史や基本的なファイナンス理論、具体的なポートフォリオの構築方法等、株式投資において大切なことをまんべんなく載っている書籍という印象です。

筆者がインデックス投資推奨している方のため、終始「インデックス投資が最適な解」というストーリーとはなっています。実際にインデックスを上回るリターンを上げ続けてきたプロの投資家がいることは事実です。一方で殆どのアクティブな投資が市場から退場していること(市場を上回るリターンを上げ続けられないこと)も事実です。

そのため、本書は個人投資家のための書籍でもあり、環境を含めた様々な面でプロに劣る個人投資家向けにインデックス投資を勧めることは支持できます。

内容のレベルは投資を始めたばかりの方には少し難しい箇所もあります(特に第3部)が、そこは飛ばしてでも最後まで読み切ることに意味がある書籍だと感じました。特に第4部にて具体的な市場の歩み方が書かれており、ここを読むためだけに購入してもいい書籍です。

また、本書に書かれている第3部を中心とした理論を理解できるまで株式投資への理解、知識をつけることができれば初心者を卒業したといえるでしょう。

最後にインデックス投資は知識をつければつけるほどリスクが取れてリターンが増えるというような投資手法ではないです。そのため、知らなくても投資ができると思われがちですが、暴落時等の最後の拠り所になるのは己の知識です。そのため、ディフェンス力を上げるためにも本書の知識を身に着けることは有意義であると考えています。

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